誤報―新聞報道の死角 (岩波新書) 後藤 文康 岩波書店 1996-05-20 価格 ¥ 735 関連商品 報道被害 (岩波新書) “犯罪被害者”が報道を変える 名誉毀損―表現の自由をめぐる攻防 ジャーナリズムの思想 (岩波新書) 新聞記者という仕事 (集英社新書) by G-Tools |
「風評被害?静岡で『福島県民お断り』の看板?」と静岡で「福島県民お断り」についての検証に続く第3弾、と言うか経過報告ですね。
先に結論から言うと福島民報さんはやっぱり裏を取っていなかった上にそれを承知で掲載した可能性も出てきました。まったく、この記事を信じた人たちの行動って何だったんだろうね。
某SNS内のコミュニティにおいて件の記事について実際に福島民報と福島県災害対策本部に問い合せてくれた方々がいました。自分も福島民報にメールで送ったのだけど未だ返信が来ないのはさておき、その大まかな流れは先日の記事の3番目のコメントと10番目のコメントに載っています。彼および彼女らにメールで事の顛末を直接聞いたところ、発言内容は信頼するに足るものだと判断したのでここに改めて記事形式で紹介します。
8日朝の対策本部会議まで
「静岡で『福島県民お断り』の看板を見た」と言う通報自体は県対策本部に実際にあったらしいです。その電話を取ったのは県対策本部広報課のN元さんという女性職員の方で、通報者と「福島県として人や車が放射能を与えないという規準を明確にするべきではないか」という話をしたとのこと。
これで「静岡にあった」としたい人はそれはもう貴方の知性と道徳に任せますと言うしか無いけど、N元さん曰く「これは静岡に限ってのことではないので、静岡という名前をだすべきではなく、なぜ福島民報がそのような報道をしたのかわからない」のだそうだ。つまりこの窓口には「静岡」以外の固有名詞がバンバン飛び交っている可能性が高いですね。
加えて、8日朝の対策本部会議に参加した職員のKコさんは「朝の対策会議でその話が出た時、静岡県という名前は出さずにそういうことがある、と発表した」と彼の責任において断言しています。
つまり8日朝の対策会議では「静岡」と言う固有名詞は一切出ていない。これが産経や読売が「首都圏」や「他県」とした理由ですね。ただ、残念ながらこの時点で福島民報が「8日の福島県災害対策本部会議で『静岡で見た』と報告があった」としたのは嘘と言う事になってしまいます。
福島民報が「静岡で見た」とした理由
福島民報だけが「静岡で見た」とした理由ですが、県災害対策本部広報部の職員に、そこに寄せられた相談の内容を聞き出した結果だそうです。聞き出した情報に「静岡であった」と分かっただけでそれが確定されるなら人民裁判も真っ青な思考回路なんですが、福島民報のK藤氏が、
- 最初「県が発表したことだから県が方針を出す」と言って誤魔化していた
- 嘘がバレると「実際の相談が静岡と言ったのは事実なのだから問題ない」
- 「県という信用できるところからの取材だから裏付けの必要はない」
福島民報の対応
事の重大さには福島民報側もさすがに気づいたらしく、編集局のY田氏が「相談が静岡を特定したものであっても、報道としては裏づけのない静岡の名前の掲載は不適当」と認め、件の記事はWebサイトから削除されました。 その前か後かは不明ですが、福島民報は福島県対策本部に、相談主の郡山の50代女性に確認したいと申し出たところ断られたそうです。
これは窓口が元からして匿名性を守るとした上での報告を受け付けていたのでしょうし、ここまで話題になってしまっては災害対策本部も個人情報保護を目的に「郡山在住50代女性」のプライバシーを徹底的に守らざるを得なくなります。だから、もう事の真相は確認のしようがなく、件の記事は噂話の域を出なくなってしまいました。
ただ、この事態を収束させるために冒頭のSNS内の方が福島民報の投稿欄に「新聞として不確かな記事が載ったことで証明もできず静岡県民も無念であるが、例えそれがあっても一部の者のすることで、静岡、日本の多くが福島と共に災害と復興に向かいたいと思っているとことを理解してほしい」旨載せることを提案。Y田氏も歓迎してくれたそうです。
事態収束に向けて
そして多少の紆余曲折を経たものの、本日20日付の福島民報「みんなのひろば」の3・11東日本大震災にて以下の文章が掲載されることになったそうです。
不確か苦情無念共に震災復興目指すこれは多くの静岡県民が抱いている感情だと思います。そして自分はこの文章が無事に掲載され事態が収束されることを願ってやみません。
ネットで福島民報に静岡県のガソリンスタンドに「福島県民お断り」の看板があり、県に相談があったとの記事を読みました。私も静岡県民で県民の愚行を止めようと色々調べましたが、看板は見つかりませんでした。福島県災害対策本部によると国の調査でも見つからなかったということです。
対策本部に相談はあったものの、確認のないまま「静岡県」と新聞に載ったことで真実と捉えられ、反証も出来ず福島県民から非難されることが静岡県民として無念です。
福島県の方々は風評被害で傷ついておられると思いますが、万が一、事実であったとしてもほんの一部の者であり、ほとんどの静岡県民、日本国民は福島県民と共に災害からの復興に向かいたいと思っていることをご理解いただきたいと願っています。
おまけ
相変わらず「友人から聞いた」「ネットで見た」「~らしい」で情報を広げてしまう人は後を絶ちませんが、これだとほぼ間違い無くデマを流した側に加わることになるのでお気をつけ下さい。感情に駆られてデマを広める人を止めることは難しいですが、そのデマに乗らないようにするには自分が冷静になるしかありません。被災地の方々の状況を鑑みれば感情的になることも致し方がない部分はあるものの、彼らが加害者となり敵を増やすことを避けるためには、冷静さを求めるしか無いと願っています。
追記
記事は無事に載ったようです。情報提供ありがとうございました。
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